記録到着通知書とは

関東平野の典型的な冬の日らしくよく晴れていて気温が6℃清々しい。
この青空の中でパソコンい向かい今日は「記録到着通知書」のお話を書いてみる。

特許をめぐる裁判は地方裁判所に提起されるが判決に不満があると知財高裁に控訴し、控訴審判決でも不満が有る場合、最高裁判所に上告する事になる。

ただし面白い事に「上告」は知財高裁に上告書を提出する事となっており、知財高裁の判決が判示された日から14日以内に上告書を提出しなければならず、上告理由は50日以内に提出しなければならない。

この時に提出期日の厳守が当然求められるのであるが、上告の理由として「知財高裁での事実認定に誤りがあって判決に不満があるから上告する・・・」と言うような内容は全く取り合って貰えず、判決が憲法に違反する問題や判決そのものに齟齬や不備など違法性がある場合にのみ上告が認められる。

それらの事に合致する内容の上告であるかどうかを第一関門として知財高裁が担っており、上告書や上告理由提出日付を遵守しない場合や上告理由が憲法問題に及ばない場合は最高裁判所に上告書が送られる事は無く、形式的な不備として「知財高裁」で却下される。ちなみに知財高裁で取扱っている期間の事件番号は「令和〇〇年(ネオ)第〇〇〇〇号」となっている。

この様に第一関門を突破して初めて上告書が最高裁判所に送られるのであるが、最高裁判所に上告書が届いた事を原告ならびに被告に知らせる通達の事を「記録到着通知書」と言う。

記録到着通知書が届くと、正式に最高裁判所で取扱う事となり事件番号が「令和〇〇年(オ)第〇〇〇〇〇号」となる(但し上告書の場合であって上告受理の申し立ての場合(オ)では無く(受)となる)。

ここで重要な事だが、記録到着通知書が通知されて事件番号も決まり、第何号法廷で審理されるかも明らかにされるが、まだ最高裁で審理を行う事を決定している訳では無い。

ここから調査官が事前に吟味を行い最高裁で審理すべきかどうかを調査した記録と、一審二審の判決文を添えて上席の調査官の手を経て、最高裁法廷に委ねられる。

到着した上告が実際に最高裁で審理され逆転判決が判示される確率は0.1%にも満たない。
しかし、過去十年間の記録によると、決して0%ではないので、一審と二審の審理が不十分である事件が存在する事は決して否定されない。

以下記録到着通知書

法曹界と知的財産

法曹界にも「カイゼン」必要

    日経新聞朝刊の経済教室のページに注目される投稿があった。
私たち発明人にとっては貴重な投稿であり、現在の知的財産権をめぐる法廷でのやりとりが、まるで浮世離れした天井人が集まって「みやこ会議」が行われるかのような現在の司法の姿を、弁護士という専門家の立場から的確にとらえている。
日経新聞【2020年11月25日・25面】私見卓見
以下、日経新聞に実際に投稿された記事を転載した内容であるが、前述の通り特許裁判の問題点がサラリと記載されている。
既成概念という遺物抱えながら走る現在の法曹界が、イノベーションされた発明の内容を理解できないまま「既成概念でその発明を裁く」と言う致命的欠陥のある現状を浮き彫りにし、簡潔にまとめて投稿されている。
日経新聞に記載された実際の紙面コピーの為、少々見づらいが以下転載しておきたい。

特許無効審判のゆくえ

無効審判請求係争で発明人の完全勝利

(筆者の発明を特許侵害している件で現在も係争中の)相手先から、「あなたの特許はそもそも特許登録が無効!!」と起こされた、いわゆる無効審判請求(無効2019-800101)の審決申し渡しが2020年(令和2年)11月12日に行われた。

(筆者の特許を侵害しているとして現在も係争中の)相手先から訴えられた審判請求内容は概ね次の様な内容。

相手の主張
1.筆者の発明は「クレジットカードの改良発明」である。
2.筆者の発明は、発明以前から存在するメルマネ送金を模した送金であり、発明内容もイーバンク宛のメルマネ送金と同様であるから、進歩性も無いし、新規性も無いから、発明として特許登録されているのはそもそも間違いである。

審判合議体の審決
1.本件審判請求は成り立たない。
2.審判請求費用は請求人の負担とする。

結論を冒頭に示したが、この無効審判請求事件は、筆者の完全勝利であった。



 特許侵害で係争中であるこの事件に関して、こんな個人発明家の発明に対して躍起になっているこの動きを見る限り、先方の企業にとって筆者の発明は余程やっかいな特許になっているものと思われる。



特に注目頂きたいのが相手方の企業の主張1「筆者の発明はクレジットカードの改良発明である」という箇所である。

と言うのが、この主張は特許の無効審判理由としては何の意味も持たない。
「改良発明」と先方が主張している通り、例え改良であっても発明となる箇所があって、そこに新規性や進歩性が満たされれば発明となるわけだから、この主張はそもそも無効審判上不要と思われる。

然し、なぜ先方の企業がこの文言に拘ったのか考えてみると、その拘りの理由が次の点にある事がわかる。

彼らが筆者の発明を侵害していないとして逃れる唯一の方法が、「【筆者の発明はクレジットカードの改良発明】であり【自社のビジネスモデルではブランド型プリペイドカードを用いている】から、著者の発明の特許を侵害していない」・・・と主張し続ける方法でしか特許侵害を免れる方法が無い事に尽きるのである。

現に現在も係争中の特許侵害事件の知財高裁判決・令和2(ネ)10023の判示に於いても、先方の企業の主張である「【筆者の発明はクレジットカードの改良発明】であり【自社のビジネスモデルではブランド型プリペイドカードを用いている】から、著者の発明の特許を侵害していない」・・・この1点のみを判示理由としているから、この主張は相手先企業にとっては唯一の隠れ蓑であるようだ。


しかし、賢明な読者の皆さんは既にご存知かと思うが、本来プリペイドカードとは「前払い式証票」を指し、いわゆる「デパートの商品券」や「ビール券」、あるいは「お米券」、「図書券」などが原点である。


それらの商品券が時代と共に変化し、図書カードやテレフォンカードが発明されてそれらをプリペイドカードと呼ぶに至った。
その後続々と「Amazonギフトカード」や「iTunesカード」などが販売されていき、プリペイドカードが定着していったのである。
更にSuicaの出現によりプリペイドカードの完成形に至ったのである。


それから随分と年数を経た後、プリペイドカードのチャージ(入金)及びリチャージ(再入金)できる点にクレジットカード会社が注目し、それまで存在していたクレジットカードを改良し、チャージする機能を備えたブランド型プリペイドカーがマスターブランドと呼ばれる大手クレジットカード会社からこの世に送り出されるのである。



この歴史的流れを見ると、相手先企業が主張している「プリペイドカード」はJCBブランドが発行する「ブランド型プリペイドカード」である事は自明であるので、相手の用いているカードはクレジットカードの改良されたカードで有る事も争う余地がない。


現に、JCBやVISAやMasterブランドは加盟店規約に於いて「ブランド型プリペイドカード」の事を「信用販売に用いるカード」即ちクレジットカードであると明記している。

令和2(ネ)10023の判示において、相手先企業がプリペイドカードを用いていると事実認定しているのは、上記の様な歴史的経緯やクレジットカード会社の規約を理解せず、ブランド型プリペイドカードとプリペイドカードが同じものであると勘違いして事に起因している事が伺える。

今回の無効審判請求が筆者の完全勝利であった事や、2020年11月25日の日経新聞朝刊25面経済教室【私見・卓見】でも当該特許侵害事件が注目を集めている事から、今後最高裁判所での審理の行方にも注目が集まるのは必至である。

最高裁判所も、今回の特許庁の審判部の審判結果を真摯に見習って正義を示して欲しいものである。
個人発明家にとっても弱小企業にとっても「最高裁判所は正義を行う最後の砦」であるからだ。

法廷や審判合議体における審理や判示や審決は大企業の為にだけあるものでは無く全ての者の為に平等にある。」この無効審判請求事件の審決はそれを示してくれたのである。
~ 途中掲載省略 ~