特許無効審判のゆくえ

無効審判請求係争で発明人の完全勝利

(筆者の発明を特許侵害している件で現在も係争中の)相手先から、「あなたの特許はそもそも特許登録が無効!!」と起こされた、いわゆる無効審判請求(無効2019-800101)の審決申し渡しが2020年(令和2年)11月12日に行われた。

(筆者の特許を侵害しているとして現在も係争中の)相手先から訴えられた審判請求内容は概ね次の様な内容。

相手の主張
1.筆者の発明は「クレジットカードの改良発明」である。
2.筆者の発明は、発明以前から存在するメルマネ送金を模した送金であり、発明内容もイーバンク宛のメルマネ送金と同様であるから、進歩性も無いし、新規性も無いから、発明として特許登録されているのはそもそも間違いである。

審判合議体の審決
1.本件審判請求は成り立たない。
2.審判請求費用は請求人の負担とする。

結論を冒頭に示したが、この無効審判請求事件は、筆者の完全勝利であった。



 特許侵害で係争中であるこの事件に関して、こんな個人発明家の発明に対して躍起になっているこの動きを見る限り、先方の企業にとって筆者の発明は余程やっかいな特許になっているものと思われる。



特に注目頂きたいのが相手方の企業の主張1「筆者の発明はクレジットカードの改良発明である」という箇所である。

と言うのが、この主張は特許の無効審判理由としては何の意味も持たない。
「改良発明」と先方が主張している通り、例え改良であっても発明となる箇所があって、そこに新規性や進歩性が満たされれば発明となるわけだから、この主張はそもそも無効審判上不要と思われる。

然し、なぜ先方の企業がこの文言に拘ったのか考えてみると、その拘りの理由が次の点にある事がわかる。

彼らが筆者の発明を侵害していないとして逃れる唯一の方法が、「【筆者の発明はクレジットカードの改良発明】であり【自社のビジネスモデルではブランド型プリペイドカードを用いている】から、著者の発明の特許を侵害していない」・・・と主張し続ける方法でしか特許侵害を免れる方法が無い事に尽きるのである。

現に現在も係争中の特許侵害事件の知財高裁判決・令和2(ネ)10023の判示に於いても、先方の企業の主張である「【筆者の発明はクレジットカードの改良発明】であり【自社のビジネスモデルではブランド型プリペイドカードを用いている】から、著者の発明の特許を侵害していない」・・・この1点のみを判示理由としているから、この主張は相手先企業にとっては唯一の隠れ蓑であるようだ。


しかし、賢明な読者の皆さんは既にご存知かと思うが、本来プリペイドカードとは「前払い式証票」を指し、いわゆる「デパートの商品券」や「ビール券」、あるいは「お米券」、「図書券」などが原点である。


それらの商品券が時代と共に変化し、図書カードやテレフォンカードが発明されてそれらをプリペイドカードと呼ぶに至った。
その後続々と「Amazonギフトカード」や「iTunesカード」などが販売されていき、プリペイドカードが定着していったのである。
更にSuicaの出現によりプリペイドカードの完成形に至ったのである。


それから随分と年数を経た後、プリペイドカードのチャージ(入金)及びリチャージ(再入金)できる点にクレジットカード会社が注目し、それまで存在していたクレジットカードを改良し、チャージする機能を備えたブランド型プリペイドカーがマスターブランドと呼ばれる大手クレジットカード会社からこの世に送り出されるのである。



この歴史的流れを見ると、相手先企業が主張している「プリペイドカード」はJCBブランドが発行する「ブランド型プリペイドカード」である事は自明であるので、相手の用いているカードはクレジットカードの改良されたカードで有る事も争う余地がない。


現に、JCBやVISAやMasterブランドは加盟店規約に於いて「ブランド型プリペイドカード」の事を「信用販売に用いるカード」即ちクレジットカードであると明記している。

令和2(ネ)10023の判示において、相手先企業がプリペイドカードを用いていると事実認定しているのは、上記の様な歴史的経緯やクレジットカード会社の規約を理解せず、ブランド型プリペイドカードとプリペイドカードが同じものであると勘違いして事に起因している事が伺える。

今回の無効審判請求が筆者の完全勝利であった事や、2020年11月25日の日経新聞朝刊25面経済教室【私見・卓見】でも当該特許侵害事件が注目を集めている事から、今後最高裁判所での審理の行方にも注目が集まるのは必至である。

最高裁判所も、今回の特許庁の審判部の審判結果を真摯に見習って正義を示して欲しいものである。
個人発明家にとっても弱小企業にとっても「最高裁判所は正義を行う最後の砦」であるからだ。

法廷や審判合議体における審理や判示や審決は大企業の為にだけあるものでは無く全ての者の為に平等にある。」この無効審判請求事件の審決はそれを示してくれたのである。
~ 途中掲載省略 ~

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